
鴻池朋子「根源的暴力」に行ってきました。
実は神奈川県民ギャラリーに入るのはこれが初めて。だから会場がどのくらいの規模なのかがまるでつかめない。
今回、そのことが幸いだったようです。
階段を降りて会場へ。
ステイトメントの文章と巨大ななめくじ、そしてこの古びた建物の空調の音がシャッターを響かせて起こる軋み。
これで泣きそうになりました。
震災後の状況。自分たちの築き上げてきたものが壊れて、その虚が無限に足下に広がってて、自由を奪われる感覚。
4年忘れてた感情がふと浮かび上がってきたのです。
人間と人間の作り上げた文明は蹂躙されてわけのわからない自然にやられてしまう。そう咄嗟に感じたのです。
現代美術の展示でここまで気持ちを揺さぶられたことはありません。
これまでに鴻池さんの作品はたくさん見てきました。でも、今回の震災後の作品は随分と変化してしまっています。
まずひとつは革を使った作品。
白くて直角のあるキャンバスの対極。
その形はマントや着物のようなフォルムになっていて、継いであるのはちゃんと革紐で結ばれてます。
その上に描かれる動物たちは自在で色彩が実に生き生きとしていました。
そしてもうひとつは陶。
手捻りで作られた小さいのがたくさん並んでたのは気持悪かったです。色彩もついててなんだかウミウシやヒトデやヒルみたい。
原初の生命のよう。あと何よりも感じたのは言葉以前の感覚なんだなあと。
瞬発力と感情とがスパークして直感でくみ上げてる感じ。
生に近い皮膚感覚を覚えます。
ドローイングもありました。額装されたのは以前からのに近いタッチでしたが、展示ケースに収まったドローイングはいつもよりも線がワイルドで濃くエネルギーに満ち満ちているような感じがしました。
進んで行くと部屋には展示ケースが24個。横3列×縦8列。
中には顔や手になり損ねた陶。
整然と暗がりに並んだケースは美しいのだけども、中を覗くと行き場のない澱みたいのがでも朽ちるのでもないような陶の白のテカテカで待ち受けてる。
こちらの気持ちが宙吊りにされるかのよう。

ラスト第5室はこの巨大作品。圧巻です。
この第5室に限り、フラッシュを使わなければ写真撮影がOKです。
写真の中央下の黒い部分がちょうどひとが通れる大きさ。前の展示室の出口から続いています。

裏はこんな風。
光のドットが成す線が銀河鉄道みたいと妄想しちゃいました。

これはおとぎ話のことが書かれてた部屋に貼られてた木版画。
実は映像のコーナーの壁にもさりげに貼ってあったり。
たぶんこういう木版もこれまでにはなかった表現方法では?

会場にはこの革のマントが何体も。
ちょうと子供くらいの大きさ。所属不明な民といった感じがしました。

階段を上がっていった上にはまた陶がありました。
このフォルム、白と質感。なんだか骸骨のようで不安な気持になりますね。

こちらはネタバレになっちゃいますが小屋の屋根。
なんとこんなテキストが!
シンプルでわかりやすいのですが作品に載せるテキストは手描きにして欲しかったなあと。キャプションはフォント使ったので構わないので。
明後日11/28土曜日まで。


