
『槐多の歌へる』その後ー山崎省三・村山槐多とその時代 に行ってきました。
なんと昨日の元旦からオープンしていた小杉放庵記念日光美術館。
いくら観光地とはいえお正月からやっているとはビックリ。
なんとも有難いことです。
村山槐多の絵画は幾度と見てはいるものの山崎省三という画家は今回初めて。
山崎省三は槐多の親友であり、遺作展の開催に尽力し、詩集『槐多の歌へる』をまとめた人物とのこと。
解説によると山崎の画業は今まであまり知られてこなかったということ。
山崎省三の他にも関係のあった初見の画家の作品も見ることができました。
まずは槐多。
やんちゃだった槐多の「火だるま槐多」という呼び名は知ってたものの、温厚な山崎省三の「ほとけの省三」というのは初めて聞きました。
それだけ性格が反対の二人なのに親友だったというのも面白い。
○「小杉未醒氏庭園にて」村山槐多
オレンジとブルーのラインが鮮烈!
エネルギーに満ち満ちていて勢いを感じる。
毎回思うのだけど22歳で没していなければ彼はどんな作品を描いたのだろう?
○「田端風景」村山槐多
実景の存在とそのエーテルをひとつの虹みたく描いてる。
虹となるとやはり「尿する裸僧」が頭に浮かぶ。
がまだこの風景は荒削りといった感じ。
○「カンナと少女」村山槐多
顔と手の赤が強烈に残る。
右上の花の赤と左下の帯の結った赤とも呼応している。ただしこの赤は実際の色彩と違和感ない。
存在がしっかりと浮かびあがりしっかりと脳裏に残る。
○「のらくら者」村山槐多
コンテで描かれたモノトーン。
なんだかこの男性の表情が仏とヤクザがだぶって見えた。
タバコふかしてる荒ぶる感じとどこか見通してるかのような達観したところを同時に持っているかのよう。
すごく不思議なトーン。
続いて山崎省三の作品へ。
○「村童(少年)」山崎省三
眼差しと頬が印象的。
グレーの背景と服のそっけないざっくりとした塗りの対比がよい按配。
○「川べり」山崎省三
山崎の風景画は筆がのたくっているのだけど削れることは少なく絵の具が滑らかに伸びている。
奥に見えるおそらくは現実の景色を越境してるラインの緑が心地よく響く。
○「裸婦十二図」山崎省三
てろーんとした力のぬけた線が愉快。
向かいの「野趣十二題」も同様のテイストで楽しい。
○「湖畔暮笛」山崎省三
絹の布に描いてるのだけど本当に布だけで折れ目もついている。
月明かりの下、笛を吹くひと。
柔らかいトーンが風景画とはまた異なる趣き。軽みがあり澄んだ感じ。
この他にとても気になる作家を見つけて嬉しくなる。
○「或浜辺にて」水木伸一
一見して茶色の岩場。よくよく見てみるとその中に牛と人が描かれている。
岩場の奥には緑の野原。空は青く白い雲が浮いている。
視線移動がとてもよく考えられていてそういった意味で今回一番楽しめたなあと。
○「モデル」水木伸一
こちらはパステル。
可憐な女性。肌はとてもきめ細かく塗られているのだけどその周辺の髪やエーテルみたいなラインはとてもシャープな線で対照的。
美しく見ててすっと入ってくる。
○「鉢(山崎省三像)」山本鼎
山崎省三の顔ということよりも、肌色の血色のよい少し禿げたおっさんの顔が底にある鉢はどう使うんだろう?と。
そういった意味でのインパクトがものすごい。
さて、再び戻って山崎省三の作品に。
○「映書山房図」山崎省三
木々が喜んで万歳してるかのよう。
このヘロヘロな筆運びが山崎の風景画の持ち味と言えるだろう。
○「TERO」山崎省三
これ、ワンコです。こういう名前なのかな?
風景画では滑らかだった絵の具がこの絵では削られててかなり暴れてる。
対照によってこのあたり変わるのだろうか?
○「宮古馬(琉球記念)」山崎省三
正面から見下ろした構図。
この目がいい。凛として澄んでいる。
正月早々に今年の干支の馬の絵がみられてラッキー。
○「オレアイにて」山崎省三
鉛筆でざっくりと描いたフォルムの味わいがよい。
ぱっと見の印象でダイレクトに描いたんだろうかなと。
小杉放庵記念日光美術館は展示スペースがそんなには大きくないので今回の展示は展示替えが細かく区切られていました。
槐多に期待してたものの実際に見てみると山崎省三の作品もかなり楽しめました。
2/16まで。
※前述したとおり展示替えがあります。