1/9に青い日記帳企画「ザ・ベスト・オブ山種コレクション展」山?館長トークショーで見ていたものの、半分見たくらいでトークショーがスタート、時間がなくきっちりとは見れておりませんでした。
ということで今日、再訪してじっくりと見て参りました。
前回見て気づかなかったところがあったのでその辺りを中心に。
○「黄衣の少女」和田英作
腕の描写がリアル。水をはじくかのようなはりのある肌。黄色ってどうかなあと思ったのですがここまできちんと肌色が映えてるので大正解。
でも、顔はごく普通なんですよね。
○「食品店」荻須高徳
佐伯祐三の作品2点が続いてなので似た絵が来たなあと思ったら大間違い。
絵の具の使い方がまるで違う。佐伯は激しく色をかき混ぜるものの厚みはそこそこ。
ところが荻田は厚いところはべったり。しかもムラが激しく薄いところとの落差がありあり。
先日、三越で荻田展を見てきたけども、佐伯と並べて初めてその個性が浮き上がるように思いました。
○「城」奥村土牛
線が意図的。確信犯。城の瓦の稜線のつなぎが妙。
これがものすごく有効で面がせり出してくるかのよう。
○「鳴門」奥村土牛
とてもおかしな波。
渦の周りの立った際の描写のエッジのするどさは固形物のよう。
重ねるラインがどことなく花びらのようにも見える。
○「満ち来る潮」東山魁夷
くだけた波頭は金とプラチナの箔。水色ベースの海にとても映えている。
逆に海面上のうねる波頭の描写はあまりなく切り絵のようなシャープな文様みたいな流れが描かれている。
こういう描写を選択したという判断が興味深い。
○「鳴門」川端龍子
逆にこちらの波頭描写はこれでもかと言わんばかり。
この形状が独特で自然の織り成すフラクタル的なものとも江戸の絵師たちが試みてきた波頭とも異なる。
バランスの保ち方が面白いのですよね。
○「牡丹」福田平八郎
咲く花の芳香のエロス。
香り芳し。絵画を見ててこんな感想を抱くことってそうそうない。
特に少し開きかけたつぼみのがかわいらしい。
一見写実的に見えるが構成をきちんと組まないとこうはならない。
○「筍」福田平八郎
牡丹とは一変、シンプルな描写におどろく。
背景の葉っぱのデザイン的パターン。
無論、描かれた年代が異なるがここまで作風が変わることにただ驚く。
○「年暮る」東山魁夷
雪のフォルムがかなりざっくり。
俯瞰した位置から描かれる京都の町並みは雪の降り積むブルーの家屋の屋根。
家屋のきっちりとしたフォルムにばらばらな雪が妙にしっくりとはまる。
○「沖の灯」小野竹喬
イメージしてた竹喬の作風から遠くて驚きました。
雲のへりのピンクが違和感なく響く。
ブルー、グレー、朱色、ピンクと色彩のバランスが素敵。
○「坐す人」高山辰雄
人物の瞳が見えないくらい薄い。
だから、ついじっと見てしまう。
そして、しばらくするとその瞳に捕らえられてしまう。彼がじっとこちらを見ていることに気づいてしまうのだ。
人物の周囲の石組(でいいのかな)は地味ながらもカラフルで抽象絵画のよう。
○杉山寧「曜」
夕日をバックに二羽の鶴が飛んでいる。
ただ、それだけの絵のはずだった。
ところがよく見ているとその夕日にも鶴にも、デジタル画像に見られるノイズみたいのが見てとれるのです。
いやいや、そんなはずはと思って近づいてみると。
なんと表面に虹色の彩色が施されているのです。これはちょっと想定外。
こういうこともあるのでやはり絵画は面白い。
○速水御舟「炎舞」
焚き火を毎日毎日見ててこれを描き出した御舟には、鶏ばかり眺めてた若冲がなんとなく重なるんですよね。
その本質を見抜き、絵として再構成し、他にないものとして完成させる。
何度見てもうなりますね。
炎の丸みと枝分かれのバランス。明らかにおかしい蛾の向きと配置。そして空の高みへと舞い上がる煙。
前期もとてもよい内容でしたが後期も必見です!
2/5まで。
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