
(府中市美術館)ファンタスティック 江戸絵画の夢と空想-後期展示-
毎年、春となると府中市美術館は素敵な展示をやってくれてました。今回から「春の訪れ江戸絵画まつり」と銘打つこととなりました。これからも毎年春にやってくれるとお墨付きを頂けたみたいで嬉しいですね。
さて、今回も気になった作品について書いてみたいと思います。冒頭のナンバーはリストの番号となります。
3.柴田是真「三日月図」
漆でなくって水墨なのだけども雲の部分がとてもよい。フォルムといい濃淡といい美しい。

14.円山応挙「雲峰図」
シンプルなフォルムだけで描く雲。
この時代によくもこういうアプローチをやってのける。
もくもくと立ちあがるフォルムが玉堂のファロスタワーにもつながってるかなあと。
33.岡本秋暉「日々歓喜図」
このタイトル、メモを見返してしまった。作品と繋がらない。
波の上を群舞する蝶たち。
波の線が黒で描かれていて手前はくっきり、奥にいくにつれてだんだん薄くなっていってる。
蝶は白で描かれていて波の描写とうまく合っている。
71.鳥居清長「金太郎」
クマがかわいいのはもちろんなんだけど、手前のカラス天狗がかわいい。
73.魚屋北渓「山姥金時図」
山姥の乳を飲む金太郎。
目を奪われたのはその背景。
山の断崖絶壁の線がエッジが立っててキレッキレの描写。
79.鳥文斎栄之「孟宗図」
竹の葉の凛とした佇まいに惹かれる。
光の差し込む部分の斜線が白で飛んでてそこに竹は描かれていない。
93.田公実「竜・虎・鷹・鯉図」
中でも虎と鷹の目ヂカラが半端ない。
絵としては虎図が一番よく描けてる。なによりもその細かい毛並み。一本一本細密に描いていて目が釘付けになる。のだけど、お手手はなんともかわいらしくてギャップがおかしい。
107.高井鴻山「妖怪図」
線が安定してしていない。ブレてるというかビリビリしている。
さかざきちはるさんのSuicaペンギンに見られるビビり線の周波を変えたというような感じ?
絵の見た目の印象からいったらまったく繋がらないのだけども。
異様なキャラのオンパレードがこの筆使いで描かれていることで妙な存在感を放つ不思議。
91.伊藤若冲「亀図」
亀自体は薄い墨で甲羅が筋目書きで描かれてる。なんともかわいらしい。のだけど、そこはやっぱり若冲。
後ろに伸びる毛の豪快な筆さばき!勢いがありまるで違うテイスト。こういう両極を一枚に収めてしまう。流石です!
121.東東洋「煙霞山水図」
三幅対なのだけど真ん中に描かれている馬上の人物に強く惹かれた。後ろ向きで笠と着物のみ。
顔どころか首さへもない。本当にこの人は存在してるのだろうか?そんな風に思ってじーっと見つめてました。
実は今回、一番好きな作品でした。
153.長沢蘆雪「蓬莱山図」
いびつ!なんだろう?この安定を放棄したかのような非日常感。
やはり蓬莱山という神秘の領域を表すにはこうするしかないと思ったのか?
109.「柳橋水車図屏風」
同じモチーフの屏風は以前にも見てるけどカラーリングがよいなあと。
基本、橋や水車、雲は金なのだけど、水が茶色というのがなんとも意外。
柳の枝のカーブが木をまあるく見せてて面白い。
111.土佐光貞「吉野・竜田図」
画面の下半分を描いていない。
真ん中に紅葉と桜を、上方に書をもってくるバランスがなんとも粋である。
124.伊藤若冲「乗興船」
大典による文章がところどころはいる。
拓版による黒みの多い画面が記憶の向こうの景色という印象。
小さく描かれた人がのフォルムがなんともよい。
125.長沢蘆雪「朧月図」
墨だけで描いた月。画面上方に雪がちらついてる。
なんともかわいらしい。
149.葛飾北斎「富士越竜図」
富士山の稜線がけっしてシャープではないのだけども角度とカーブが絶妙。すっごくかっこいい。
とまあ全部は書けませんがけっこう気に入った作品が多かったなあと。
会場にはリストの他に画家解説のプリント(なんと8ページ、ホッチキスどめ)と、「ファンタスティックたんけんたい」なるお子さん向けのカラーのも。

「ファンタスティックたんけんたい」はちゃんとやっておけばよかった。大人でも気づかないところがあるので要チェックですよ。

あとこんなのもありました。月が予め印刷されているハガキに用意されているハンコを自由に押すのです。
お一人様一枚限り。うさぎさんを押してみました。こういうのはやっぱり嬉しいですね。
さて、毎回のことなのですが、この江戸絵画まつりにくると思うのですよ。
見終えてなんと満足度の高い展示だったなあと。
また来年も行きたいですね。
5/8まで。
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2012年「三都画家くらべ-京、大坂をみて江戸を知る」
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2007年「動物絵画の100年 1751-1850」