
久々に山種美術館に行ってきました。
「かわいい」と銘打ったタイトルでしかも山種美術館とくれば間違いなく充実した内容であろうと期待していざ恵比寿。
今日は寒くてタクシーで。
すると運転手さんから既に今日は何度も山種に行くお客さんを乗せたとのこと。何かあるのですかね?と尋ねられてしまった。
はて何かイベントやってたっけ。
山種美術館に入って納得。
カフェはいっぱい。チケットを買う人の列も出来てて混雑してそうな予感。
会場に足を踏み入れてみて、なお納得。思ってた以上に混雑してて嬉しくなりました。
やはり皆さん、お目当ては若冲のよう。
うーん、今回はかなり嬉しい悲鳴。
かわいいの大好きなだけにいいなと思う作品がいっぱい!でも全て書くのはさすがに難しいのでセレクトして書いてみますね。
○伊藤若冲「伏見人形図」
素朴でかわいらしい。朱の色が蛍光みたくも見えるのだけどもとても自然と見える不思議。
顔の表情の細い線の筆致が肝なのかな、このかわいさの。
○柴田是真「山姥と金太郎図」
金太郎と山姥の対幅。金太郎は髪と斧の黒がびしっと決まってる。解説に書いていなかったけどもおそらくこれも漆でしょうか。
山姥は着物のラインが味わいがあって楽しめました。
○川端龍子「百子図」
画面は丸く、象を囲んだ子供達は楽しそう。象はかなりリアルでけっしてかわいくないのだが、子供たちは意外にもかわいい。自分がこれまでに見てた龍子の絵からはこういう感じっていうのはちょっと想像出来なかった。絵を見続けているとこういうことがあるので嬉しい。
○奥村土牛「枇杷と少女」
枇杷の幹の滲みがいい案配。パッと見は素朴なトーン、特に少女については。でもよく見ると枇杷の実は写実に近い描写ではっとする。
○小山硬「天草(納戸)」
ちょっと見た事のない独特な感じ。
髪など黒みが画面を閉める割合の多い中に丸い顔と合わせた両手の白の対比。そして手前のマリアさまに刻まれた金の十字。ストイックと崇高さとが色でも響いてる。
○伊藤若冲「樹花鳥獣図屏風」
やはりこの屏風の前が一番混雑していました。
架空のものも含めた動物たちの姿がただただ楽しい。モザイクの構成はもちろんだけども空と思って見てた箇所に水鳥がいるという異様なはずなのにそれを感じさせない構成の妙。
見てて思うのはみんな楽しそう。争うことなく皆がその生を謳歌している。やはり若冲は仏教なんだなあと。
近付いて見てみると状態はあまりよくないように見受けたのでいずれは補修などなされるべきなのではないかなあと思ってみたり。
○牧 進「明り障子」
竹林の中、雀が楽しそう。旧くなった笹の茶色の葉の上に茶色の雀が居るのだけどもこれがちゃんと成立してしまう。
雀はリアルに、下の笹はパターンみたく見えるように描かれているおかげ。
そしてこの景色の左右にタイトルにある障子が描かれていて奥行きのある画面になっている。横長である画面もスケール感があってよろし。
○奥村土牛「虎」
山種美術館での茶会の初釜で配った扇子の原画を土牛が干支ひとまわりの12回を担当したことがあったのだそう。その寅年の原画。
肩のチカラが抜けたかのような筆運びでくしゃっとしててでもやっぱり虎にしか見えない。この扇子、12種類まとめて見たいものです。
○森狙仙「猿図」
えっ!狙仙ってこんな風にも描けたんだとびっくり。いつもの毛並みの一本一本にまで気合いの入ったリアリティと違い、コミカルなテイスト。でもやっぱり上手くないと描けない。
○竹内栖鳳「みゝずく」
ぎりぎりセーフ。これ以上壊すと成立しない。
その際で心得て止めてる。見終わってもこの妙味は残りますね。
○上村松園「夏美人」
画面上に女性のみ描いているのだけども、この着物の織りなすフォルムとバランスが秀逸。
○熊谷守一「蝉」
「とのさま蛙」も好きなんですが色彩のバランスの難しさの肝としてはこっちが凄いなあと。
水色、緑、複数の茶色系。
ミニマムの線と色とで勝負してる感じがたまりません。
○棟方志功「美魅寿玖図」
このミミズクはもう反則。
向かって右のはなんかドラえもんみたい。
熊谷の4連続コンボの後、一気に弾けて笑いましたね。
あとこの他にもサントリー美術館所蔵の紅板(べにいた)も小さく繊細でよかったです。
やはり思ってたとおり楽しい展示でした。大満足!
3/2まで。