
ニューオータニ美術館で開催中の「大正・昭和のグラフィックデザイン 小村雪岱展」に行ってきました。
この時代を冠してるところが実に大事でこの時期だからこそ出来た木版画による装丁本に雪岱が見事にハマってしまったのだなあと実感。
会場はそんなに大きくはないものの本ということもあって点数は多く見応えのある内容でした。
第一章 泉鏡花との出会いー花開く才能
49.茄子
冒頭のモノトーンの作品。描かれた女性の線がくせがあって面白い。
顔は少しでっかくてでも品が損なわれない感じは見事。
そして雪岱のオリジナルとわかるのがいい。デザインとして扱われるもののやはりこういうタッチを見ると作家性がとても強いのがわかる。
1-2.泉鏡花著『日本橋』
川が水平に太く描かれていて船が行き交っている。
川を挟んで並ぶ蔵も整然というよりも暖かみがあるトーンでかわいい。
そして画面の一番手前のレイヤーに描かれているのは赤と黒の蝶たち。
51.紅梅図着物
なんとそのほとんどが黒。
下のほうにようやく見える鶯色。その上に紅梅がかかる。
黒の部分の切れ方がどことなく燕尾服かのよう。
第二章 舞台とのかかわりー戯曲本と舞台装置
舞台に使われたセットの原画。
極端に横長の画面は設計図ではなくもうこれで絵画レベル。
受け取った側はイメージを膨らませやすかったのでは?
他に戯曲の装丁本もありこちらも見応えあり。
第三章 挿絵ー共鳴する画文
95-4.おせん 第41回挿絵下図
線だけで成り立ってるのがよくわかる。
かがんだ女性の着物のフォルムが美しい。
シンプルな線ほどごまかしが効かない。手数が少なく見える仕事の美しいこと。
特集ー装丁の妙
101.武者小路実篤著『死』
このタイトルにこの画面を持ってくる発想力がなかなかに驚かされる。
こおろぎいっぱいのビジュアル。もうこれで勝ってる。
105.遅塚麗水著『東京大観』
雪の降りつむ景色。空は藍色。
もう新版画まんまです。本の装丁でこれは贅沢!
142.長谷川伸著『段七しぐれ』
よしず(だと思うが違うかな?)の縦の直線と背景のグレーの妙。
たまに出てくる直線のエッヂの効いた構成がたまらない。
161-1.をとめ第1巻1号
続く2号、3号ともどこかやぼったい感じの娘がいい。顔がかわいらしい。
資料/その他

165.雪の朝
直線と曲線の威力を思い知る。
この案配がたまりません。なんてことない風景だけども画面構成がシンプルかつ大胆で記憶に残る。
166.青柳
柳のたわむ曲線と座敷の三味線と鼓の置かれた畳の直線と。
柳がうるさくならずに畳の間にかかるのがいい。

169.見立寒山拾得
こちらもやはりバランスが面白い。
中央に屈む女性二人。
空いた背景を散らせることなくつなぎ止める落葉の大きさと配置。
見終わって満足度が高い内容でした。
装丁って物語を想起するので見てて気持ちが入りますね。
11/25まで。


