神奈川県立近代美術館 葉山で開催中の須田国太郎展に行ってきました。
普段、須田国太郎ってあまり意識的には見ていなかったのでちょうどいいなあと思い行ってきました。
第1章 渡欧前
火災で焼失してしまって大学よりも前の作品は残っていないのだそう。
このコーナーでは大学時代の作品を数点紹介。
筆の運び方なんかは後々に通じているなあと。
第2章 渡欧・模写
大学院を辞めスペインへ。
模写もよいのですが現地で描かれた風景画がよかったですね。
☆「アーヴィラ」
密集する家と家。
後々の作風からしてみるとなんと素直でシンプルか。
でも、これは見てて好きな絵です。
でも、隣に展示された風景画はとろけるかのように部分が崩壊しててこれまたびっくり。
第3章 第一回個展から大戦へ
☆「書斎」
失敗して丸めた紙くず。シルエットになったその机の主と思しき人物の影。
奥に広がるのは窓の外だろうか?水色の空。
画面を意図的に構成してる感が強いという意味では珍しいかも。
第4章 山間風景
☆「連山」
山肌をえぐったような黒いスジ。かなり思い切った描き方で印象に残りました。
☆「夏」
手前左半分の部分は抽象になってしまいそうな雰囲気。
乱雑というかカオティックな筆使い。
青空と緑の木と家屋はちゃんとそれと分かる描き方。
夏の妙な感覚っていうのもなんとなく画面に繁栄されているような木がしました。
第5章 植物と花の描かれた風景
☆「夜桜」
桜のピンクで黒がきつくなく和らいで見える。
夜灯りの雰囲気がなんともいい。
油絵でこの感じっていうのあんまりないのでは。
☆「犬」
手前に描かれた黒犬はほぼ陰影のない黒ベタで描かれているのに対して、背後の家々は奥行きをきちんと描いている。
こういう対極のものをひとつ画面に放り込んでしまう構成が見事。
☆「るりみつどり」
削られた画面が印象的。
鳥の輪郭がぶれちゃってるけどもおかまいなし。
構成よりも衝動が上回ってるように感じました。
☆「花」
仄かに光る花瓶の照り返しがランプみたい。
黒いバックの中になんでもない草花が浮かび上がっている。
でも、これは美しい。何度となく見返してしまった作品。
第6章 人里の風景
☆「校倉(甲)」
画面における明と暗、木々の曲線と建物の直線の対比。
この構成になんとなくではあるけどもレイヤーやパーツ的なものを感じてみたりする。
でも、デザインという洗練されたものではなくやっぱりこれは絵画。
☆「浜−室戸」
面における塗りの妙なところを発見。線の走らせ方と色と塗りが明らかにおかしいのだけどもちゃんとそんなふうに見える不思議。
会場には「国太郎の言葉」のパネルが展示されていて、「固有色」(ローカールカラー)にあった、光線による色の変相について書かれた部分がまさにそうなんだなあと。
実際に色が光線によってどう見えるかという部分で違う色を乗せるというようなことが書かれててやはり作品とつながっているなあと。
画面へのアプローチの真摯さに痺れます。
層の厚さと暗いトーンはどこか靉光に通じるものもあるのかなあと。
5/27まで。