土曜日から茅ヶ崎市美術館でスタートした、桑久保 徹 A Calendar for Painters without Time Sense. 12/12 に行って来ました。
桑久保さん初となる公立美術館での個展、どんな構成になるのだろうと期待して会場へ。
今回はカレンダーシリーズなる作品群とのこと。
以下は茅ヶ崎市美術館のサイトに掲載の文章から。
桑久保が近年取り組んでいるのは、美術史に輝く巨匠をオマージュした「カレンダーシリーズ」。ムンク、ゴッホ、モディリアーニなど桑久保により選ばれた巨匠が12か月に当てはめられ、カレンダーの「月」に見立てられます。画面には巨匠たちの息遣いが漂い、鮮やかな色彩と描かれた様々なモティーフが溶け合うことで、時空を超えた共鳴が生まれます。
絵画を見ていれば見ている分、楽しめそうです。
期待しつつ、一階の展示室に足を踏み入れるとそこには6点の大型絵画が鎮座していました。
1月 パブロ・ピカソのスタジオ2月 エドヴァルド・ムンクのスタジオ3月 ヨハネス・フェルメールのスタジオ4月 ジェイムズ・アンソールのスタジオ5月 ポール・セザンヌのスタジオ6月 ピエール・ボナールのスタジオ
まず、意外だったのはピカソのモノトーン。ゲルニカが描かれているのを見つけて納得なのですが青の時代からなんとなくブルーだという想像でいたのです。画面の中には数十点ものピカソ作品が散りばめられており画面は水平線を境にその上下に切り分けた構成になっています。この構成はカレンダーシリーズの作品の大半に共通しているのですがこの基本ともいうべき形から逸脱してくのが面白くなりました。
ムンクはこの冒頭のビジュアルのグリーンが印象的な一枚です。ムンク作品に漂う密やかで暗がりを帯びたそれでいて神秘的なイメージを見事に昇華させています。見てて気持ちいいんですよね。
フェルメールはまあ、知名度も高いし知ってる作品も多いなあというところでしょうか。もとの作品の空気感や緻密さは出すのが難しいなあと。
ジェイムズ・アンソール、、、ええと、申し訳ないのですが全然知りませんでした。というか、過去に見てるかもしれないけれどこの名前でパッと浮かんでこないのですよ。
そういう作家の作品をこの並びにぶっ込んでくるチョイスはちょっとすごいなあと。
調べてみるとベルギーの画家で19世紀後半から20世紀前半にかけて活動していたとのこと。
わざわざアンソールを選んできたのだからどうしても描きたかったのでしょう。
画面にいくつも登場するドクロと全体のトーンが印象に残りました。
セザンヌはとてもわかりやすくシンプル。
上方にはサント・ヴィクトワール山が描かれており、画面下部に散りばめられた中には静物画のフルーツなども。
ボナールはもっと暗いトーンになるのかと思っていたら明るい色合いだったのが自分としては意外に感じたり。
さて、会場は地下へと続きます。
7月 ジョルジュ・スーラのスタジオ [スライドショー]8月 フィンセント・ヴィレム・ファン・ゴッホのスタジオ9月 デイビット・ホックニーのスタジオ10月 ルネ・マグリットのスタジオ11月 アメデオ・クレメンテ・モディリアーニのスタジオ12月 アンリ・マティスのスタジオ
まず、ゴッホ。ピカソが青でなかったのはゴッホで青を描きたかったカラーなのかなと。ブルーの空の豪胆な筆致と絵の具の生々しいテカりがたまりません。そしてオレンジの夜の光と。
そして、まさかのデイビット・ホックニー。ずるい。二重にずるい。この12人でホックニーを入れてくるとは思いもよらず。アンソールは年代的に入るのはわかるのですが、そしたらホックニーですよ。しかも、この絵だけほかと構成がまるでことなります。基調となる水平線がないどころか、風景を組み立てる構成が入れ子のようで、あっ、これは横尾忠則さんに近いなあと。え、ここでまさかの西村画廊繋がり!この構成だととにかく視線移動が楽しいです。
スーラの作品はスライドショーでモニター越しに拝むしかありません。海外の個人コレクターの所蔵とのことでまあこれは仕方ないノかな。いつか実物を見たいなと思わせる作品。こちらも構成がちょっと面白く、うまく画面を設計して組み立てたなあという印象。
マグリット、不穏なトーン薄曇りな感じが「らしい」なと。
モディリアーニはちょっと面白く異色。ほかの作品は画面の中のトーンは統一感があるのだけれどもさにあらず。画中の絵画作品よりもひときわ目立つのが彫刻作品の描写。ここだけ写実的でその違和感というか、意図的に浮かせた感じが独特なリズムを刻む。
マティスは色合いが好きかな。印象は残っているのだけれども画面構成はすっかり忘れてしまっている。やはり、こういう感想はすぐに書かねばですね。
そして、地下にはもうひとつの展示室が。
こちらはもうひとつのカレンダーシリーズが12点。
木炭や水彩で描かれた作品プラスLPレコード。ちゃんと作曲家に依頼して作成した音源のよう。
さて、ここでもまた楽しいイレギュラー。
デイヴィッド・ホックニーだけ、メディアが違う。こういうオマージュはじんと来る。ポラロイドを連続させて作る画面。ホックニーがやってた手法をここに持ってくるとは。しかも、ホックニーに宛てたと思われる手紙。見えるのは宛名の書かれた封筒のみ。この中の手紙を読みたいなと思いました。
展示室の中央にプレーヤーがあってこのLPと思しき音源が流れていました。
なかなかに充実の内容でした。
2021年2月7日(日)まで。
桑久保さん初となる公立美術館での個展、どんな構成になるのだろうと期待して会場へ。
今回はカレンダーシリーズなる作品群とのこと。
以下は茅ヶ崎市美術館のサイトに掲載の文章から。
桑久保が近年取り組んでいるのは、美術史に輝く巨匠をオマージュした「カレンダーシリーズ」。ムンク、ゴッホ、モディリアーニなど桑久保により選ばれた巨匠が12か月に当てはめられ、カレンダーの「月」に見立てられます。画面には巨匠たちの息遣いが漂い、鮮やかな色彩と描かれた様々なモティーフが溶け合うことで、時空を超えた共鳴が生まれます。
絵画を見ていれば見ている分、楽しめそうです。
期待しつつ、一階の展示室に足を踏み入れるとそこには6点の大型絵画が鎮座していました。
1月 パブロ・ピカソのスタジオ2月 エドヴァルド・ムンクのスタジオ3月 ヨハネス・フェルメールのスタジオ4月 ジェイムズ・アンソールのスタジオ5月 ポール・セザンヌのスタジオ6月 ピエール・ボナールのスタジオ
まず、意外だったのはピカソのモノトーン。ゲルニカが描かれているのを見つけて納得なのですが青の時代からなんとなくブルーだという想像でいたのです。画面の中には数十点ものピカソ作品が散りばめられており画面は水平線を境にその上下に切り分けた構成になっています。この構成はカレンダーシリーズの作品の大半に共通しているのですがこの基本ともいうべき形から逸脱してくのが面白くなりました。
ムンクはこの冒頭のビジュアルのグリーンが印象的な一枚です。ムンク作品に漂う密やかで暗がりを帯びたそれでいて神秘的なイメージを見事に昇華させています。見てて気持ちいいんですよね。
フェルメールはまあ、知名度も高いし知ってる作品も多いなあというところでしょうか。もとの作品の空気感や緻密さは出すのが難しいなあと。
ジェイムズ・アンソール、、、ええと、申し訳ないのですが全然知りませんでした。というか、過去に見てるかもしれないけれどこの名前でパッと浮かんでこないのですよ。
そういう作家の作品をこの並びにぶっ込んでくるチョイスはちょっとすごいなあと。
調べてみるとベルギーの画家で19世紀後半から20世紀前半にかけて活動していたとのこと。
わざわざアンソールを選んできたのだからどうしても描きたかったのでしょう。
画面にいくつも登場するドクロと全体のトーンが印象に残りました。
セザンヌはとてもわかりやすくシンプル。
上方にはサント・ヴィクトワール山が描かれており、画面下部に散りばめられた中には静物画のフルーツなども。
ボナールはもっと暗いトーンになるのかと思っていたら明るい色合いだったのが自分としては意外に感じたり。
さて、会場は地下へと続きます。
7月 ジョルジュ・スーラのスタジオ [スライドショー]8月 フィンセント・ヴィレム・ファン・ゴッホのスタジオ9月 デイビット・ホックニーのスタジオ10月 ルネ・マグリットのスタジオ11月 アメデオ・クレメンテ・モディリアーニのスタジオ12月 アンリ・マティスのスタジオ
まず、ゴッホ。ピカソが青でなかったのはゴッホで青を描きたかったカラーなのかなと。ブルーの空の豪胆な筆致と絵の具の生々しいテカりがたまりません。そしてオレンジの夜の光と。
そして、まさかのデイビット・ホックニー。ずるい。二重にずるい。この12人でホックニーを入れてくるとは思いもよらず。アンソールは年代的に入るのはわかるのですが、そしたらホックニーですよ。しかも、この絵だけほかと構成がまるでことなります。基調となる水平線がないどころか、風景を組み立てる構成が入れ子のようで、あっ、これは横尾忠則さんに近いなあと。え、ここでまさかの西村画廊繋がり!この構成だととにかく視線移動が楽しいです。
スーラの作品はスライドショーでモニター越しに拝むしかありません。海外の個人コレクターの所蔵とのことでまあこれは仕方ないノかな。いつか実物を見たいなと思わせる作品。こちらも構成がちょっと面白く、うまく画面を設計して組み立てたなあという印象。
マグリット、不穏なトーン薄曇りな感じが「らしい」なと。
モディリアーニはちょっと面白く異色。ほかの作品は画面の中のトーンは統一感があるのだけれどもさにあらず。画中の絵画作品よりもひときわ目立つのが彫刻作品の描写。ここだけ写実的でその違和感というか、意図的に浮かせた感じが独特なリズムを刻む。
マティスは色合いが好きかな。印象は残っているのだけれども画面構成はすっかり忘れてしまっている。やはり、こういう感想はすぐに書かねばですね。
そして、地下にはもうひとつの展示室が。
こちらはもうひとつのカレンダーシリーズが12点。
木炭や水彩で描かれた作品プラスLPレコード。ちゃんと作曲家に依頼して作成した音源のよう。
さて、ここでもまた楽しいイレギュラー。
デイヴィッド・ホックニーだけ、メディアが違う。こういうオマージュはじんと来る。ポラロイドを連続させて作る画面。ホックニーがやってた手法をここに持ってくるとは。しかも、ホックニーに宛てたと思われる手紙。見えるのは宛名の書かれた封筒のみ。この中の手紙を読みたいなと思いました。
展示室の中央にプレーヤーがあってこのLPと思しき音源が流れていました。
なかなかに充実の内容でした。
2021年2月7日(日)まで。