ベルリン国立美術館展に行ってきました。
ついにようやくという感じですね。
フェルメールの「真珠の首飾りの少女」が見られるとあっては行かないわけにはいきません。
1部 絵画/彫刻
第一章 15世紀:宗教と日常生活
☆チーマ・ダ・コネリアーノと工房「聖母子」
3人並んだ様は堂々としてて圧巻。
美しいし色味が豊かなのだけども決して浮き立った感じにならないところにとどめられているような感じ。
仏画に出てくる観音さまとはまるで違うのですよね。
あっ、観音様はそもそも性別を超えた存在だったかw
☆エルコレ・デ・ロベルティ「洗礼者ヨハネ」
痩せ細ってよれてしまった脚は鹿か馬かのよう。
これに対して腰に巻いてる布は緑と赤で鮮やか。
このコーナーは立体も素晴らしかったです。
彫刻もですが、陶器のレリーフ的なのもあって見ごたえがありました。
第二章 15−16世紀:魅惑の肖像画
☆ルーカス・クラーナハ(父)の工房「マルティン・ルターの肖像」
ルターといえば教科書で習ったあの宗教改革のひとです。
これ、工房作だとパッと見はそんなにすごい絵には見えない。
だけど、すごくいい。
見据えた先が何なのか。このアングルがいろいろと想起させてくれます。
そしてこの顔の影の落とし方がほどよい。
薄い墨みたいな黒がかかっててなんとなくフジタの絵画を想起してしまった。まるで印象は違うのだけども。
☆ニコラス・ヌーシャテル「婦人の肖像」
まずは強調されたかのような腕のフォルムがばんと目に入ってくる。
でも、それだけではない。
このご婦人の表情に目がいく。どこか張り詰めたかのような面持ち。
感情がはちきれんというのではなく自然なんだけどもどことなくそのひとの持つ性格だったり人当たり的な雰囲気が出ているかのよう。
服の模様がかなり面白いデザイン。フォルムと堅いポーズからどことなく甲冑っぽく見えてもしまう。
第三章 16世紀:マリエリスムの世界
ルーカス・クラーナハ(父)「ルクレティア」
全裸の女性が自らの胸元に短剣を突き刺そうとしている。
真っ先に気になったのは作品が放つ妖気かのようなオーラ。
なんだかとてもやばい感じです。
オールヌードでしかも不穏な状況というのはもちろんですがやはり画面のタッチからも十二分に漂っています。
気になったのが左足の指(向かって右)。親指と他の指の長さが妙に違う。
あと耳のフォルムとバランスも変。
首から肩にかけてのラインもちょっと普通ではない感じ。
このコーナーに彫刻も多数ありましたがこれはどれも見ごたえあり。
重厚な重さも感じるけども洗練された表現で印象はスマート。
☆ヤン・サンデルス・ファン・ヘメッセン「金貨を量る若い女性」
ちょっと含みのある表情がよい。
あとこの量る手のポーズも何か惹かれるものがある。
袖のだんだんになってるのと髪のもこもこウェーブが背後の壁と窓の直線と対照的。
第四章 17世紀:絵画の黄金時代
☆ディエゴ・ベラスケス「3人の音楽家」
パッと見た時に感じるこの違和が上手く説明できない。
なんとなく人物の表情の浮かび上がり感がその原因のように思うのだけども。
見た後に残るんですよね。この絵。
特に左の少年の表情がね。
☆ヤン・ステーン「喧嘩するカードプレーヤー」
やはりこういう人間くさい血湧き肉踊る的なシチュエーションが上手いなあと。
後ろでけしかけてる連中の粗野な感じがたまらない。
いこのただならぬ場を嗅ぎ取って犬まで吼えている。
☆ヤン・ダヴィッドゾーン・デ・ヘーム「果物、花、ワイングラスのある静物」
写実の極み。ブドウの実のしずる感、ガラスの反射の写りこみが特に素晴らしいなあと。
制作にどのくらいの時間を要したのだろうとか想像してしまう。
☆ヨハネス・フェルメール「真珠の首飾りの少女」
やはりこの作品の周りだけはいつもひとがいっぱい。
フェルメールの作品はずっと見ていられる。
画面を執拗に観察して舐めるように見て飽きない。
椅子の鋲なんてうるさくなってしまいそうなのに逆にぴったりとはまって見えてくる。
気になったのは画面の左下の部分かなり暗く闇に落としこまれていて、そこがどうなっているのかは分からない。
着衣の黄色の質感はいつも登場するあのトーン。素晴らしい。
窓の横の黒い壷が静かながらも光ってる。画面の中の他のものとは異なるこのマテリアル感だが浮いていない。
見てるうちにいろいろなことに気づくのでもう一回見に行きたいと思います。
あとイグナーツ・エルハーフェンの「イノシシ狩り」「シカ狩り」は質の高い木彫でなんとなく欄間っぽいなあと。
第五章 18世紀:啓蒙の近代へ。
☆セバスティアーノ・リッチ「バテシバ」
描画のレベルはそんなには高くないものの裸のバテシバの表情のかわいらしさに目を奪われました。
☆ブリュッセル、ヨッセ・デ・フォスの工房「村祭(ケルメス)」
これ、参考出品とかだったんだろうか?
でっかい織物。
200年以上前のものだけども状態がよく人物の表情なんかもよく描けてる。
2部 素描
第6章 魅惑のイタリア・ルネサンス素描
想像していた素描のイメージよりもはるかに豊かな内容なのが嬉しかった。
線で描画してるくらいだと思ってたらさに非ず。
白鉛を使って稜線を描いた描写が素晴らしい。
陰影の加減が上手く表現出来ていてスケッチレベルのものだと思ってたことを反省。
ちょっと残念だったのはこの展示室の構成。
なんんとも収まりが悪く落ち着きませんでした。
ボッチチェリの素描をメインに持ってきたのは分かりますがあの部分の壁が唐突すぎますね。
構成的にもここをスルーして出てしまうことも出来るのは意図的だったのか気になるところ。
と最後に辛口になってしまいましたが展示されている作品の質、ボリュームともに満足度の高い内容です。
あとこちらはポストカードの袋がよいです。モノクロのルターがばっちりです。
やはり「真珠の首飾りの少女」は格別でずーっと見ていられますね。
9/17まで。