山種美術館で開催中の「桜・さくら・SAKURA2012」に再訪してきました。
先日トークショーで伺ったときに時間が足りず、もう一回見て書きたいなあと思っていたのです。
(関連記事:青い日記帳企画「桜・さくら・SAKURA2012」トークショー(山種美術館))
前回はトークの内容に沿ってましたが今回はわたしなりの感想をまとめてみました。
写真は前回のトークショーの際に撮影させて頂いたものです。
富田渓仙「嵐山の春」(部分)
川をイカダでくだる。おそらく材木用で丸太を組んだのが連なって川を流れてる。
ところがその上の男たちは緩めで涼しげな表情。全部全部ではないのですが。
とても生き死にに関わる仕事に見えないのがすごいなと。
水墨、みどり、青を取り合わせて描かれてて筆のタッチがリズミカル。
加山又造「夜桜」
闇の妖しさに惹かれてしまう。
桜の花の劣化させたかのような描写がはかなさを加速させてく。
石田武「千鳥ヶ淵」
水色をバックに桜が描かれてるだけだと思って見てたら何か違う。
あっ!
斜めに降り注ぐ線は光でした。
気付いてよかった。この部分で印象がまるで変わりました。
これは画像では分かりにくいかと思います。
奥田元宋「湖畔春耀」
色の多彩さが違和感なく入ってくる。画面上方の少し暗めのピンクに目が行きました。あれは桜なんでしょうかね。
狩野常信「明皇花陣図」(部分)
これ前回はあんまり惹かれなかったのだけどすごく好きになりました。
見てて女子が大勢で戯れてきゃあきゃあ言ってるのが見ててものすごく伝わるのです。
中国風ですが向こうならば描かれないであろう桜が描かれてるところがミソ。
松岡映丘「春光春衣」
迷うことなく描かれたかのような線がキレイ。
画面としても桜、松、縁側、女、着物と重層的。
絵画としての視線移動が楽しい。
何よりも完成度がべらぼうに高い。
橋本雅邦「児島高徳」
木を奥のはぼやけて、手前のははっきりと描写してるのだけど、この表面の描き方が実はかなりオリジナルでよくみるとまるでリアルなものでなく面白い。
加藤登美子「桜の森の満開の下」
胸をはだけてたり、目が怖いところが注目されちゃいます。
桜の花と花の間の金地のバックを引っ掻いたような線が入っててこれが正面から見ると反射の関係で黒っぽく見えるのですが、角度を変えて斜めからだと金に見えるのです。
このあたり計算でやってたらすごいし、感覚でやっててもすごいなあと。
結城素明「春山晴霞」
山に松を描いてるのだけど、画面上方のほうのところだけみると最早、松に見えないところが面白いなあと。
小茂田青樹「春庭」
地面に落ちた桜の花びらがまるで雨粒のような描写。
咲いてる花びらと違うのだけど絵として違和感なく受け入れられる。
小野竹喬「春野秋渓 のうち 春野」
桜の花が光ってるかのよう。周りにピンクを塗って花に目がいく。
山の木々の際を塗ってない描写も面白い。
稗田一穂「朧春」
すごく気になったこと。画面の下のほうにスクラッチしたかのような短いランダムな線。
千住博「夜桜」
夜の黒、幹の黒、小降りなピンクが突き刺さる。
上村松篁「日本の花・日本の鳥 のうち 日本の花」
杜若の紫の色が単色でなく異なる色で紡がれてるのがよいなあと。
扇面のデザインなれどそのサイズは扇よりもまるで大きい。
速水御舟「夜桜」
ほぼ水墨による描写。色は花の白の胡粉と葉脈の金箔のみ。
ギリギリに抑えた表現に逆にそそられる。
無駄がなく潔し。
川端龍子「さくら」
何度見てもこのさくらの幹の茶色の描写にはやられる。
ピンクの花ではなく普通に描いたらつまらなくなる幹をここまで楽しく見せてくれる。
同じ面を違う茶色の取り合わせでまとめる構成はお見事。
川崎小虎「山桜に雀」
月光に照らされてる花びらの輪郭には線を入れる描写が技あり。
平松礼二「花精さくら」
墨の黒とみどりと黄色の混じりあう加減がそれぞれを残したままでキレイ。
再訪して前回見えてなかったところに気づくことが出来て満足でした。
連休ということもあって館内は賑わってました。
さて、見終わってほっと一息。カフェで和菓子を頂きました。
これは奥村土牛「醍醐」をイメージしたもの。
なんと、ゆず餡。さわやかなお味でなんとも春めいてるなあと。詳細はこちら↓をご覧ください。
「桜・さくら・SAKURA 2012」 オリジナル和菓子のご案内
http://www.yamatane-museum.jp/doc/cafe_120331.pdf
展示は5/20までです。