なかなかに忙しくて行くことが叶わない展示の多いこと。
そんな中、会期前半を見逃していた「美術館で旅行!-東海道からパリまで-」に行ってきました。
第1章 広重と歩く東海道と名所
まずは歌川広重(初代)による東海道五拾三次。版元:竹内孫八〔保永堂〕大判錦絵。
・浜松・冬枯之図
立ち上る煙の白と茶のグラデーションの描写が素晴らしい。こういうの見ると版画ってすごいなあと思う。
・吉田・豊川橋
宿の前で2人の女性が旅人を羽交い絞めにしちゃってる。御油宿の留女。
こういうひとのやりとりのおかしさっていうのは今も昔もかわりませんね。
・池鯉鮒・首夏馬市
草原に居並ぶ馬が美しい。フォルムと色に惹かれる。
・四日市・三重川
動と静で切り取られた瞬間。
笠を飛ばされ追いかけるおとこ。それと対照的に橋の上で上着を風にたなびかせるおとこ。
・庄野・白雨
モノトーンで描写された雨と木々のグラデーションが素敵。
・土山・春之雨
川に流れる流水に!段になっているところの水色と白に描かれているのだけどなんだか妙。これ、すごく気になりました。
東海道五拾三次は何度となく見てるけどそれでも見るたびに楽しめますね。
・阿波鳴門之風景(雪月花之内花)
新大橋に振る雨の中を行きかう人々。
立て位置の構図がばっちりと決まってる。横にはゴッホが模写した図版が並んでいます。
第2章 日本を旅する〜 北海道から沖縄へ〜
・吉田善彦「春雪妙義」
山を描く線(稜線よりも中のほう)に紫がかった色を使ってるのだけどマッチしてる。現実としてはおかしいはずなのにそう考えさせないというのが力量ですね。
・小茂田青樹「丘に沿える道」
柔らかい描写が目にも優しい。緑が多めなのも好み。
・石井林響 総南の旅から「仁右衛門島の朝」
木のもふもふした描写が髭のよう。
・石本正「飛騨の酒蔵」
酒蔵とその手前の水路はまっすぐに描写してるのだけど整然としていて美しい。
・川合玉堂「竹生嶋山」
なんでだか岩がいきいきとしているように見えました。
・小林古径「清姫のうち熊野」
中央に描かれる建物は整然とした直線がほとんどなのだけども。山の木々の墨のぼかしたのいい。
物語世界という感じが漂ってる。
・奥村土牛「那智」
縦に伸びる白い水の流れ。下の岩とのコンビはファロス的に見えてしまった。
・速水御舟「比叡山」
最初、目に入って笑ってしまったくらい。
筆をまんま置いたフォルムの墨の滲みで形づくる山の朴訥な佇まいがたまりません!!
・寺崎広業「舞子の朝」
松がどうにも生っぽくひとの足かのように見えてしまった。
・東山魁夷「春来る丘」
ほっとする絵なのだけども実は画面構成が結構うるさい。
でも、まるでそう感じないということに驚く。
第3章 世界を旅する〜 マンハッタンからパリへ〜
・横山大観「楚水の巻」
なんと全長14メートルあり、前期後期で巻替えとのこと。
濃い墨で描かれる鳥に目が行きます。
月だけはなんであのタッチなのかは?
・速水御舟「埃及土人ノ感慨」
水流の描写が「炎舞」の炎のフォルムに通じているなあと。
こちらは緑だし、人物でしかも異国なのでまるでイメージは異なります。
ラストにあった御舟の欧州でのスケッチ6点は細い線で明るいトーンで見入ってしまいました。
こういう展示を見ると、旅に行きたくなりますね〜。
9/23まで。